スキルタクソノミーとは
スキルディクショナリとの違い・階層の作り方
「スキルタクソノミー」という言葉を、スキルを軸にした人材マネジメントの話で目にする機会が増えました。この記事では、スキルタクソノミーの意味、よく一緒に出てくる「スキルディクショナリ」や「スキルマップ」との違い、そして自社で作るときにいちばん迷う「階層を何段にするか」を、順に説明します。
仕事に必要なスキルを、「棚」と「個別スキル」のような階層で整理した分類体系。スキルを分類することで、集計や比較、他の体系との対照ができるようになる。個々のスキルの意味と水準の定義まで含めたものは「スキルディクショナリ」と呼ばれる。
スキルタクソノミーとは
スキルタクソノミーは、英語の skill taxonomy をカタカナにした言葉です。タクソノミーは「分類体系」という意味で、もともとは生き物を「界・門・綱・目・科・属・種」のように階層で分ける学問の言葉でした。スキルタクソノミーは、その考え方をスキルに当てはめたもので、仕事に必要なスキルを棚(分類)と個別スキルのような階層で整理した分類体系を指します。
ポイントは「階層」にあります。スキルをただ一覧にしただけでは、数が数百、数千になったときに、どこに何があるのか分からなくなります。本屋に本が並んでいても、棚の分類がなければ探せないのと同じです。スキルタクソノミーは、スキルを探せるようにするための棚の分け方です。
似た言葉に「スキルディクショナリ(スキル辞書)」があります。実務ではほぼ同じ意味で使われますが、厳密には役割が違います。違いは後の章で説明します。
なぜ分類の階層が要るのか
スキルを言葉にする取り組みは、どの会社でも最初は小さく始まります。ある部署で30個、別の部署で50個というように一覧を作るうちは、階層はなくても困りません。困るのは、会社全体に広げたときです。
- 探せない:スキルが数百を超えると、一覧をスクロールしても目当てのものにたどり着けない
- 重なる:部署ごとに作った一覧を合わせると、同じ力が別の名前で何度も出てくる
- 比べられない:営業部門の「提案力」と企画部門の「提案力」が同じものか、違うものか判断できない
- 数えられない:「技術系のスキルを持つ人は何人いるか」のように、まとまりで集計できない
階層があると、これらが解けます。上の階層でまとまりを数え、下の階層で個別のスキルを探す。同じ棚に入るものは重なりを疑い、違う棚に入るものは違うものとして扱う。スキルタクソノミーは、スキルの数が増えても使い続けられるようにするための土台です。
スキルディクショナリとの違い
スキルタクソノミーとスキルディクショナリは、同じ対象を別の面から見た言葉です。本屋にたとえると、タクソノミーは「棚の分け方」、ディクショナリは「一冊一冊の中身」にあたります。
| スキルタクソノミー | スキルディクショナリ | |
|---|---|---|
| 定めるもの | スキルの分類と階層(どの棚に入るか) | スキルごとの意味と水準(何ができればよいか) |
| 答える問い | このスキルは、どのまとまりに属するのか | このスキルは何を指し、どの程度できれば「できる」と言えるのか |
| よく使われる場面 | 海外の人事の資料、スキルを軸にした人材マネジメントの設計 | 日本の人事の実務、研修や評価の基準づくり |
| 別の呼び方 | スキル分類、スキル体系 | スキル辞書、スキルの辞書 |
分類だけがあって定義がないと、棚はあるのに本の中身が空、という状態になります。反対に、定義だけがあって分類がないと、中身はあるのに探せません。そのため、実務ではタクソノミーで棚を作り、ディクショナリで中身を書くという形で、2つを一体で使います。「スキルディクショナリ」という言葉が分類の階層まで含めて使われることが多いのは、このためです。
スキルディクショナリそのものについては、スキルディクショナリとは(解説記事)で詳しく説明しています。
スキルマップ・スキルベース人材マネジメントとの関係
スキルマップは、「誰が、どのスキルを、どの水準で持っているか」を一覧にした表です。スキルタクソノミーは、その表の縦軸(スキルの項目)をどう並べるかを決めるものにあたります。分類がそろっていないスキルマップは、部署ごとに項目が違い、横に並べて比べることができません。
近年よく聞く「スキルベース人材マネジメント」は、職種や等級ではなく、一人ひとりが持つスキルを単位にして、育成・配置・採用を考える進め方です。この進め方では、社員の数×スキルの数という大きな組み合わせを扱うことになります。スキルタクソノミーがないと、この組み合わせは整理のしようがありません。スキルタクソノミーは、スキルベース人材マネジメントを始めるときの最初の設計図と言えます。
階層を何段にするか
スキルタクソノミーを作るとき、いちばん最初に決めることが「階層を何段にするか」です。ここで迷う会社が多いので、考え方を書きます。
深くしすぎない
階層を増やすほど、「このスキルはどの段のどこに入れるか」を決める手間が増えます。深い階層は、作った人にしか理解できなくなり、現場の人が自分のスキルを探すときにかえって迷います。生き物の分類のように7段も要りません。
本体は「棚」と「個別スキル」の2段
多くの場合、次の2段で足ります。
棚の数が多くて見渡しにくいときだけ、棚をまとめる上の段を1つ足します。それでも3段までです。大切なのは、いちばん下の個別スキルの粒度を先に決めることです。個別スキルは、「この業務に必要な力」として説明でき、水準を4段階程度で書き分けられる細かさにそろえます。粒度が決まれば、それを束ねる棚は自然に決まります。上の分類から決め始めると、下に来て「入れる場所がない」スキルが必ず出てきます。
階層とは別に「横の軸」を持つ
階層は1本の木のような構造です。しかし、実際のスキルには、どの分野でも使う汎用的な力と、特定の分野だけで使う専門的な力があります。また、同じ棚のスキルでも、ある業種でしか使わないものと、業種を問わず使うものがあります。これを階層の中に無理に入れると、同じ力が複数の棚に重なって現れます。汎用か専門か、どの業種・職種で使うか、といった見方は、階層とは別の「横の軸」として、スキルごとに札を付ける形で持たせると整理しやすくなります。棚は「何の技能か」、横の軸は「誰が使うか」。この2つを混ぜないことが、分類を長く使えるものにします。
自社で作るときに迷いやすいこと
1. 分類の軸を何にするか
「技術・営業・管理」のような仕事の分野で分けるか、「知識・技能・姿勢」のような力の種類で分けるか、「製造・医療・金融」のような業種で分けるか。どれにも理屈はあります。目安は、棚は「何の技能か」だけで分け、業種や職種のような「誰が使うか」は横の軸に逃がすことです。業種で棚を分けると、同じ技能が業種の数だけ重複して現れ、数えることも比べることもできなくなります。
2. 同じ名前のスキルが、業種や部門で意味が違う
「原価管理」は製造業と建設業では中身が違い、「提案」は営業と企画では求められるものが違います。これらを無理に1つにまとめると、定義があいまいになります。名前が同じでも、意味が違うなら別のスキルとして扱い、「同じ名前の別物」であることが分かるようにしておくことが大切です。
3. 自社の言葉と、世の中の言葉をどう合わせるか
国や公的な機関が公開しているスキルの分類体系は、いくつかあります。それをそのまま使うと、自社の仕事の特色が表せません。自社だけの分類で作ると、社外の研修や採用市場の言葉と合わなくなります。共通の骨組みを土台にして、自社ならではの部分を足していく形が、使い続けやすい作り方です。
4. 作ったあと、どう更新するか
事業や技術が変われば、必要なスキルも、分類の棚も変わります。新しいスキルを足すときにどの棚に入れるか、棚を分けたり統合したりしたときに前の版とどう対応するか。分類の変更履歴を残しておかないと、数年で誰も全体を把握できなくなります。
スキル大全について
株式会社Personalityの「スキル大全」は、職種・業務・スキルをひとつの体系でつないだ仕事の辞書です。スキルの分類の階層(スキルタクソノミー)と、スキルごとの意味と水準の定義(スキルディクショナリ)を、最初から一体で持っています。
- 職種461、業務1,458、スキル3,932を、ひとつの体系に収録
- すべてのスキルに、4段階のレベル定義と、そのレベルにあるかを確かめる判定設問
- 職種から業務、業務から必要なスキルと水準へ、一本の線でたどれる構成
よく一緒に出てくる用語と並べると、次のようになります。この表は、用語解説の各ページで共通です。
| 用語 | 定めるもの | 答える問い | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| タスクディクショナリ | 業務(何をする仕事か)を職種ごとに一覧にしたもの | この職種は、どんな業務を担うのか | 業務の整理・標準化 |
| スキルタクソノミー | スキルの分類と階層(どの棚に入るか)。上から下へ枝分かれする木の形 | このスキルは、どのまとまりに属するのか | スキルの整理・集計 |
| スキルディクショナリ | スキルごとの意味と水準(何ができればよいか)。水準のそろえ方は作る会社しだい | このスキルは何を指し、どこまでできれば「できる」か | 育成の目標づくり |
| スキルオントロジー | スキル同士、スキルと職種・業務・資格との関係(何とどうつながるか)。複数の種類の線でつながる網の形 | この職種に何が要るか。このスキルに近いものは何か | 検索、推薦、マッチングの土台 |
| スキルマップ | 誰が、どのスキルを、どの水準で持っているかの表。水準は自己申告になりやすい | 今、社内に誰がいて、何が足りないのか | 現状の把握 |
| スキル大全 | 職種・業務・スキルと、その分類・水準・つながりをひとつながりで持つ辞書。すべてのスキルに4段階のレベル定義と判定設問 | この職種・この業務に、どの力がどの水準で要るのかを一度に引ける | 育成・配置・採用の要件に、そのまま置き換えられる |
作って終わりではなく、版を重ねて更新しています。既存のスキル体系をお持ちの企業さまには、対照して統合した「貴社版」もご用意できます。
分類の内訳、定義文、レベル定義、判定設問は一般には公開していません。利用許諾をいただいた企業さまにご提供しています。
よくあるご質問
スキルタクソノミーとスキルディクショナリは違いますか
同じ対象を別の面から見た言葉です。スキルタクソノミーはスキルの分類と階層を定め、スキルディクショナリはスキルごとの意味と水準を定めます。実務では2つを一体で使うため、ほぼ同じ意味で使われることもあります。
スキルタクソノミーとスキルマップの違いは何ですか
スキルマップは、誰がどのスキルをどの水準で持っているかを一覧にした表です。スキルタクソノミーは、その表のスキルの項目をどう分類して並べるかを決める、前提となる体系にあたります。
階層は何段にするのがよいですか
棚と個別スキルの2段を本体にし、棚が多すぎるときだけ上に1段足すのが目安です。深くするほど分類の手間が増えて現場で使われなくなります。いちばん下の個別スキルの粒度を先に決め、それを束ねる形で棚を決めるのが進めやすい順序です。汎用か専門か、どの業種で使うかは、階層とは別の横の軸で持ちます。
スキルタクソノミーは自社で作れますか
作れますが、分類の軸、同じ名前のスキルの扱い、世の中の言葉との合わせ方、更新の仕方で迷いやすく、全社に広げる段階で止まることが多くあります。共通の骨組みを土台にして自社の部分を足す形が、使い続けやすい作り方です。
スキルベース人材マネジメントにスキルタクソノミーは必要ですか
必要です。スキルベース人材マネジメントは社員の数×スキルの数という大きな組み合わせを扱うため、スキルを分類して整理する体系がないと、育成・配置・採用のどの場面でも集計や比較ができません。
本稿の要点
- スキルタクソノミーは、スキルを「棚」と「個別スキル」のような階層で整理した分類体系
- スキルの数が増えても探せる・比べられる・数えられるようにするための「棚の分け方」
- スキルディクショナリは「中身」、スキルタクソノミーは「棚」。実務では一体で使う
- 階層は深くしない。棚と個別スキルの2段を本体にし、いちばん下の個別スキルの粒度を先に決める
- 汎用か専門か、どの業種・職種で使うかは、階層とは別の横の軸で持つ。棚は「何の技能か」、横の軸は「誰が使うか」
参考資料
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「iコンピテンシ ディクショナリ(iCD)」(アーカイブ)ipa.go.jp。業務をタスク、能力をスキルとして整理した国内の代表的な辞書
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタルスキル標準(DSS)」ipa.go.jp。DXを推進する人材の役割とスキルの標準
- 厚生労働省「職業能力評価基準」mhlw.go.jp。業種・職種・職務ごとに能力を段階で示した公的基準
本稿は上記を参照し、当社の言葉で整理したものです。各基準の内容そのものは、それぞれの発行元の資料をご確認ください。
学術的な文脈や社内資料で本稿を引用する場合は、次の形式をお使いください。
株式会社Personality(2026)「スキルタクソノミーとは|スキルディクショナリとの違い・階層の作り方」株式会社Personality 用語解説, 2026-10-22公開, 2026-11-01更新, https://www.personality-sea.com/skill-taxonomy
