タスクディクショナリとは
スキルディクショナリとの違い・業務を言葉にする手順
スキルの整理を始めると、必ず「業務」の側をどう言葉にするかという問題にぶつかります。業務の一覧を定義したものがタスクディクショナリです。この記事では、タスクディクショナリの意味、スキルディクショナリとの違い、なぜ業務を先に言葉にするのか、業務の粒度をどう決めるか、そして自社で作るときに迷いやすい点を、順に説明します。
会社の仕事を業務(タスク)の単位で一覧にし、それぞれが何をする仕事かを定義したもの。「仕事の辞書」の業務の側にあたり、職種ごとにどんな業務を担うのかを示す。業務ごとに必要なスキルと水準を結びつけることで、スキルディクショナリと対で使う。
タスクディクショナリとは
タスクディクショナリは、会社の仕事を業務(タスク)の単位で一覧にし、それぞれが何をする仕事かを定義したものです。「仕事の辞書」の、業務の側にあたります。日本では、情報処理推進機構(IPA)が公開した「iコンピテンシ ディクショナリ」が、業務を「タスクディクショナリ」、能力を「スキルディクショナリ」として対で定めたことで、この言葉が広まりました。
タスクディクショナリが答えるのは、「この職種は、どんな業務を担うのか」という問いです。人の評価や育成の話では、どうしてもスキルの側に目が行きますが、スキルは業務から引いたときに初めて「要る力」になります。業務が言葉になっていないと、スキルの一覧は宙に浮きます。
この記事では、タスクディクショナリの意味、スキルディクショナリとの違い、業務を言葉にする手順と、自社で作るときに迷いやすい点を説明します。
なぜ業務を先に言葉にするのか
スキルを整理する取り組みは、多くの場合「うちの社員にどんなスキルがあるか」から始まります。しかし、この順序で作った一覧には、持っているが仕事では使わない力や、何のために要るのか分からない力が並びます。
- スキルの「要る・要らない」は業務が決める:同じ力でも、ある業務では必須で、別の業務では不要。業務が決まらないと、必要な水準も決まらない
- 育成の目標は業務の言葉で伝わる:「このスキルをLv3に」より「この業務を一人で回せるように」の方が、本人にも上司にも分かる
- 配置と採用は業務の空きから考える:誰が抜けると、どの業務が止まるのか。業務が言葉になっていないと、穴が見えない
- 業務は事業の変化を先に受ける:新しい業務が生まれ、古い業務が消える。業務の一覧があると、スキルの入れ替えもそこから追える
つまり、タスクディクショナリは、スキルディクショナリを仕事の実態につなぎ止める錨です。業務を先に言葉にし、その業務に必要なスキルと水準を結びつける。この順序が、スキルの一覧を「使える」ものにします。
スキルディクショナリとの違い
| タスクディクショナリ | スキルディクショナリ | |
|---|---|---|
| 定めるもの | 業務(何をする仕事か) | スキル(何ができればよいか)と水準 |
| 単位 | 職種の下の業務。動詞で書ける大きさ | 業務をこなすのに要る力。水準を4段階程度で書き分けられる細かさ |
| 答える問い | この職種は、どんな業務を担うのか | その業務をこなすには、どんな力がどの水準で要るのか |
| 作る順序 | 先 | 後。業務から引く |
| 主な使い方 | 業務の整理・標準化、職務記述書の材料、配置の穴の把握 | 育成の目標づくり、評価の基準、採用の要件 |
2つは別々に作るものではなく、業務とスキルを結びつけて初めて使えます。「この業務には、このスキルがこの水準で要る」という線が引かれていると、職種から業務、業務からスキルへとたどれます。この線を定めるのがスキルオントロジーで言う「使う場面」の関係です。
業務を言葉にする手順
1. 職種の下に業務、業務の下に作業の3段で考える
職種は「営業」「設計」のような仕事のまとまり、業務は「見積を作る」「図面を審査する」のような動詞で書ける単位、作業はその中の手順です。スキルを結びつける単位は、真ん中の業務にそろえます。職種に直接スキルを結ぶと大きすぎ、作業に結ぶと細かすぎます。
2. 動詞で書く
「見積」ではなく「見積を作る」、「品質」ではなく「出荷前に検査する」。名詞だけの項目は、何をするのか人によって読み方が変わります。動詞で書くと、必要なスキルが自然に浮かびます。
3. 成果物か、相手か、節目で区切る
業務の切れ目に迷うときは、「何が出来上がるか(成果物)」「誰に対して行うか(相手)」「いつ行うか(節目)」のどれかで区切ります。切れ目の決め方を会社で1つにしておくと、部署ごとの粒度がそろいます。
4. 業務ごとに必要なスキルと水準を結びつける
ここでスキルディクショナリとつながります。1つの業務に結びつくスキルは、多くても十程度に収めます。何十も結びつく業務は、まだ大きすぎる印です。
5. 兼務と例外は、業務の側で表す
人が複数の職種をまたぐときは、人に職種を2つ付けるのではなく、担当する業務の一覧で表します。業務の単位がそろっていれば、兼務は「担当業務の組み合わせ」として扱えます。
自社で作るときに迷いやすいこと
1. 粒度が部署によってばらつく
ある部署は職種のような大きさで書き、別の部署は作業のような細かさで書く。これがいちばん多いつまずきです。切れ目の決め方(成果物・相手・節目)を先に全社で決め、見本を示してから書き出します。
2. 部署名と業務を混同する
「総務の仕事」「品質保証の仕事」は部署の名前であって業務ではありません。同じ業務が複数の部署で行われることは普通にあります。業務は部署から切り離して定義し、どの部署が担うかは別に持ちます。
3. 現在の担当者の仕事を、そのまま業務にしてしまう
「田中さんがやっていること」を書き出すと、その人の兼務や癖が業務に紛れ込みます。業務は、人が代わっても残る単位で定義します。
4. 作ったあと、どう更新するか
事業や組織が変われば業務も変わります。新しい業務が生まれたとき、どの職種の下に置くか、消えた業務をどう扱うか。変更の履歴を残しておかないと、数年で誰も全体を把握できなくなります。
スキル大全について
株式会社Personalityの「スキル大全」は、職種・業務・スキルをひとつの体系でつないだ仕事の辞書です。業務の側(タスクディクショナリ)とスキルの側(スキルディクショナリ)を別々に作るのではなく、業務ごとに必要なスキルと水準が結びついた形で、最初から持っています。
- 職種461、業務1,458、スキル3,932を、ひとつの体系に収録
- すべてのスキルに、4段階のレベル定義と、そのレベルにあるかを確かめる判定設問
- 職種から業務、業務から必要なスキルと水準へ、一本の線でたどれる構成。業務の粒度は体系の中でそろえてある
よく一緒に出てくる用語と並べると、次のようになります。この表は、用語解説の各ページで共通です。
| 用語 | 定めるもの | 答える問い | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| タスクディクショナリ | 業務(何をする仕事か)を職種ごとに一覧にしたもの | この職種は、どんな業務を担うのか | 業務の整理・標準化 |
| スキルタクソノミー | スキルの分類と階層(どの棚に入るか)。上から下へ枝分かれする木の形 | このスキルは、どのまとまりに属するのか | スキルの整理・集計 |
| スキルディクショナリ | スキルごとの意味と水準(何ができればよいか)。水準のそろえ方は作る会社しだい | このスキルは何を指し、どこまでできれば「できる」か | 育成の目標づくり |
| スキルオントロジー | スキル同士、スキルと職種・業務・資格との関係(何とどうつながるか)。複数の種類の線でつながる網の形 | この職種に何が要るか。このスキルに近いものは何か | 検索、推薦、マッチングの土台 |
| スキルマップ | 誰が、どのスキルを、どの水準で持っているかの表。水準は自己申告になりやすい | 今、社内に誰がいて、何が足りないのか | 現状の把握 |
| スキル大全 | 職種・業務・スキルと、その分類・水準・つながりをひとつながりで持つ辞書。すべてのスキルに4段階のレベル定義と判定設問 | この職種・この業務に、どの力がどの水準で要るのかを一度に引ける | 育成・配置・採用の要件に、そのまま置き換えられる |
作って終わりではなく、版を重ねて更新しています。既存のスキル体系をお持ちの企業さまには、対照して統合した「貴社版」もご用意できます。
分類の内訳、定義文、レベル定義、判定設問は一般には公開していません。利用許諾をいただいた企業さまにご提供しています。
よくあるご質問
タスクディクショナリとスキルディクショナリは何が違いますか
タスクディクショナリは「何をする仕事か」という業務を定義したもの、スキルディクショナリは「何ができればよいか」という力を定義したものです。業務が先、スキルが後の関係にあり、業務ごとに必要なスキルを結びつけて使います。
タスクディクショナリは、職務記述書(ジョブディスクリプション)と同じですか
違います。職務記述書は1つのポジションについて、担当する業務と求める要件を書いた文書です。タスクディクショナリは、会社全体の業務を同じ粒度でそろえて一覧にした辞書で、職務記述書を書くときの材料にあたります。辞書があると、ポジションごとに業務の書き方がばらつきません。
業務の粒度はどのくらいにすればよいですか
目安は「必要なスキルを結びつけられる大きさ」です。「営業」のように大きすぎるとスキルが何十も結びついて意味がなくなり、「電話をかける」のように細かすぎると数が爆発します。職種の下に業務、業務の下に作業という3段で考え、スキルを結びつける単位は真ん中の「業務」にそろえると扱いやすくなります。
タスクディクショナリは自社で作れますか
作れますが、部署によって粒度がばらつく、部署名と業務を混同する、兼務の扱いで迷う、事業の変化に更新が追いつかない、の4点で止まりやすい取り組みです。共通の骨組みを土台にして自社の部分を足す形が、使い続けやすい作り方です。
スキルより先に業務を言葉にするのはなぜですか
スキルは、業務から引いたときに初めて「要る力」になるからです。スキルから始めると、持っているが使わない力まで並び、何のために要るのかが分からない一覧になります。業務を先に決め、その業務に必要なスキルを結びつける順序にすると、一覧が仕事の実態とつながります。
本稿の要点
- タスクディクショナリは、会社の仕事を業務の単位で一覧にし、何をする仕事かを定義したもの。仕事の辞書の業務の側
- スキルは業務から引いて初めて「要る力」になる。業務が先、スキルが後
- 業務の単位は、職種の下・作業の上。動詞で書き、成果物・相手・節目のどれかで区切る
- 1つの業務に結びつくスキルは十程度まで。何十も結びつく業務は大きすぎる
- 迷いやすいのは、粒度のばらつき、部署名との混同、担当者の仕事をそのまま業務にすること、更新の決まりがないこと
参考資料
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「iコンピテンシ ディクショナリ(iCD)」(アーカイブ)ipa.go.jp。業務を「タスクディクショナリ」、能力を「スキルディクショナリ」として対で整理した国内の代表的な辞書
- 厚生労働省「職業能力評価基準」mhlw.go.jp。業種・職種・職務ごとに、職務の内容と求められる能力を段階で示した公的基準
本稿は上記を参照し、当社の言葉で整理したものです。各基準の内容そのものは、それぞれの発行元の資料をご確認ください。
学術的な文脈や社内資料で本稿を引用する場合は、次の形式をお使いください。
株式会社Personality(2026)「タスクディクショナリとは|スキルディクショナリとの違い・業務を言葉にする手順」株式会社Personality 用語解説, 2026-11-01公開, https://www.personality-sea.com/task-dictionary
